2018年 01月 10日
ピサのせいです。
トスカーナのパンは塩が一切入っていない。
私が住むローマ郊外はパンが美味しいことで有名な町が近い。地元のパン屋さんで買う普通のパンでさえ、実はかなり美味しい。しかも、こんなん一人じゃ1週間かかっても食べきれない!という大きさで2ユーロもしない。
このパンに長年慣れていたので、数年前のエルバ島でのバカンスで初めてトスカーナのパンを口にしたとき、うげげげっ!!!! なにこれ???? だったのを覚えている。
味けがないのだ。
パンに含まれるお塩って、そんなてんこ盛りには入れないと思うけど、ほんの少量のお塩がこんなにも味を変えることに驚いた。
バカンスの最後の方にはトスカーナ料理って結構塩気が多いので、なるほどお塩なしのパンで程良いんだなと妙に納得したけど、観光地での外食だもの、そりゃあ味濃かったよねと今では思う。
実際、トスカーナの家庭でごちそうになるご飯は、エルバ島で食べたほどしょっぱくない。
塩気ではなく、お味がとっても繊細なのに、味わいというか、旨味があるので、お塩なしのパンがその味を引き立てる。
クリスマスイブの今夜は食い倒れディナーが待っているというのに、ピサから車で20分ほどのロレンツァーナに住むお友達にプレゼントを渡しながらのランチを地元のエノテカで取る事に。
さすがにね、プリモだセコンドってのは無理。夜のためにお腹開けておかないと。
じゃあ、前菜の盛り合わせをワインと一緒にちびちびとつまもうと頼んだ。
それが、また結構な量だったんだけど。笑
お塩なしのトスカーナのパンにトッピングのソースを塗って食べるブルスケッタ。まさにお塩なしだからこそ美味しい組み合わせ。
ローマでもブルスケッタは前菜で食べる事もあるけど、トスカーナほど重要視はされていないメニューだと思う。
トスカーナだと家庭でもオイルとお塩をパンに振りかけて食べることが多いけど、ここまでローマ人はパンに味を足すことはない。
トスカーナのパンって日本の白米のポジションのような感じ。
「なんで、トスカーナのパンにお塩が入っていないのか、知ってる?」
ブルスケッタを頬張る私にピサ人が話し出す。
「ピサのせいなんだよ。わっはっはっは!」
歴史を遡る事、1100年なんて時代ですが、その頃、ピサとフィレンツェは常に戦う宿敵同士の都市国家であったそうで、当時、トスカーナ地方の大きな港はピサのみ。
海上交易で入って来るお塩をフィレンツェを降伏させるために、「おまえになんか、売らねーよ!」と供給を止めちゃった訳で。
で、フィレンツェはピサに降伏するより食事の基本であるパンを塩なしで作るようになったそうで。
なにせお塩が入って来ないし、お塩の税金があったそうで、これも高かったので、庶民が工夫したんですね。
そんな話をピサ人から聞きながら、ピサ県の町ロレンツァーナで食べるトスカーナのパン。
おいちかったです。